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Author: 「MINED&MIND」編集部
Photo: 三浦知也
Date: 2026 02/26







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Author: 「MINED&MIND」編集部
Photo: 三浦知也
Date: 2026 02/26「MINE&MINE」(=「私のもの」と「私のもの」がぶつかり合う!?)と題した対談シリーズvol.3。
今回登場するのは、金山駅から徒歩10分、JR高架下に構えたカフェ兼木工所を営む24PILLARSの勝崎慈洋さん(通称:トヨピー)、金山駅から北へ15分ほどのところにある、アートと音楽を内包するオルタナティブスペース、SPAZIO RITA/DUCTのよいちさん。
昨年、MINED&MINDが企画した展示で初のコラボレーションを果たした両店。
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2店のオーナーは自分たちがやりたいことをダイレクトに店に反映してきた中で、コアなファン層を掴んでいる人柄も魅力的な人物だ。そんな似て非なる存在でありながらも、金山という街に対しても、店づくりの方針についても、考え方もスタンスも全く違う!?いや、実は根底で繋がっている!?二人が語り合った、金山という街と自分たちのスタンス。
特別対談シリーズ「MINE&MINE」#③
ーではまず、店名の由来から教えてください。
よいち:SPAZIO RITAは初代店長がつけて、DUCTも2代目店長がつけたんだよね。響きだけで、特に深い意味はないよ。ちなみに、RITAやる前に栄でやってたクラブ(=Daghter)も店名は店長に任せてた。俺は(栄・女子大通りの地名にちなんで)「女子大温泉でどう?」とか言ってたんだけど、却下されたよね(笑)。
ー尖りすぎてる(笑)。
よいち:だからもうお任せ。名前なんか、どうでもいいじゃん、はっきり言って。でも、24PILLARSってかっこいいよね。
勝崎慈洋(通称:トヨピー):店名の由来は、建物全体に24本の柱があるからっていうだけで。うちもほぼ意味はないんですけど……。24PILLARSで検索すると、ダライ・ラマの本が出てくるらしくて。木工所の方の名前がDaLa 木工なので、そことリンクしてるんじゃないか?って深読みされたりもするんですけど。その本読んでいないし、全然関係ないんです(笑)。
よいち:そういう話、RITA(リタ)にもあって。栄にDJ 刃頭さんがやってたJirri(ジリ)ってお店があったんですが、あれは、仏教の言葉の“自利”に由来していて。で、 Jirriによく行ってた子がうちに来て、 「リタって仏教の“利他”ですよね」って言われて。適当に「そうだよ」って言っちゃった(笑)。後付けで、そういうことにしようかなって思ったり。
ー(笑)。
ー24PILLARSは内装・設計もかなりかっこいいですが、デザインはどちらにお願いしたんですか?
トヨピー:大阪のニンキペンさんというところに全体の設計はお願いしていて。家具や什器など細かな部分は自分たちで考えて自分たちで作ってます。
ー自分たちで什器つくれちゃうのは強みですね。当初の予定はカフェはなく、木工所だけの予定だったと伺いました。
トヨピー:そう。全部工場にする予定で、カフェは端っこの方に少しだけ、のつもりでした。ワークショップができて、木工体験できる場所も作ろう、それぐらいの目標でした。でも、実際に飲食店やってみたら楽しくて。まさか自分が飲食店をやるとは思ってなかったし、イベントスペースとして使う構想も最初はなかったんです。最初はDJブースもなかったし。
トヨピー:当初のイメージでは静かなオシャレカフェをのんびりとやろう、と考えてましたが、この場所の広さを活かしたイベントやパーティー利用も増えてきました。
ー24PILLARSで、最初にイベントをやったきっかけは?
トヨピー:きっかけは、HAYASSENという学生時代のバイト先の同僚にあたるDJからの一言ですね。彼から「毎月1回ここでイベントやりたい」って言われたんです。最近は、クラブでやるの嫌なんだって言ってて。
よいち:クラブシーン自体がここ10年くらいで変わってきたよね。HAYASSENみたいな2000年代頭からやってる名古屋のDJたちが、みんな40後半〜50歳とかいい年齢になってきているし。クラブでやりたくないって気持ち、すごく分かる。クラブってやっぱり若い子の溜まり場だから、上の世代たちは自分たちの居場所だと感じにくくなってくる。
ーそれで、DJをやりたい人たちの受け皿が、飲食店に移ってきた?と。
よいち:そう。Paradise Natureとかカジェヘラ(=Callegera STAND GARAGE)とか、24PIILARSも。店自体が集客力を持ってるから、イベントとしても成立しやすいし。こういう場所は今、必要とされているんだと思うよ。
ー木工所と飲食店兼イベントスペースって、業態もやり方も全然違うと思うんですが、大変でしたか?
トヨピー:うちの場合は、カフェやイベントの売上より、木工の方がメインでもあるんです。本業の木工所はオーダーメイドなので注文のないものを作る必要がないのですが、料理の場合は注文を受けて作るにしても前段階の仕込みが多すぎて大変すぎますね。飲食はやったことないのに始めたので、まだまだ不安でいっぱいです。
ーなるほど。実は木工所が24PILLARSが発信するカルチャーを支えているんですね。せっかくなので、ちょっと木工所の方も見せてもらえますか?
通常時は入れない「DaLa木工」に特別に入らせてもらって工場見学。
よいち:基本は商業用の什器を作ってる?
トヨピー:そうです。デザイナーさんとか設計の人が全体を描いた中で、現場で大工さんが作れないものを代わりに作る役割が多いですね。
ー社内にデザイナーは?
トヨピー:いないです。たまに私がデザインするくらいで、デザイナーゼロで、職人オンリーなんです。デザイナーはいないけど、図面から設計を起こせる人間はいます。図面を元に「実際に作るとこうなるよ」っていう提案をしたりします。
よいち:今、職人さんは何人くらいいるの?
トヨピー:21人です。
ー惜しい。そこは24じゃないんですね。
トヨピー:(笑)。
ー職人さんは、みんなそれぞれ作業場所は決まってる?
トヨピー:決まってます。毎回作るものが違っているので、分業はしていないくて。1人が最初から最後まで一貫して作業をします。オーダーメイドなのでどんな注文にも応え得る地力を持てるようにと、常に全力で取り組める体制を心掛けています。
ートヨピーさん自身ももとは木工職人だったそうですが、ここにはご自身の道具箱とか作業スペースとかあるんですか?
トヨピー:今はほとんど私は作っていないんで自分のスペースはないですね。たまに作る時もあるんですが、整理できない人間なので、その辺に道具とか置きっぱなしにしてしまって、他の職人さんに怒られたりしてます(笑)。
ーなるほど(笑)。でも、みなさんいつも仲良さそうで、いい職場だな〜って外から羨ましく見てます。
トヨピー:ありがとうございます(笑)。
到着。引き続き、SPAZIO RITA/DUCTにて対談を続行。
ー先ほどの対話で、「最近はクラブではなく、飲食店でのDJイベントの勢いを感じる」という話もありましたが、よいちさんはRITA/DUCTを、飲食店でもクラブでもない場所にしたかった?
よいち:そうそう。どっちでもない。俺は、もともと栄でクラブやってた時から、ニッチな音楽シーンばっかり攻めてきて。クラブミュージックから離れて、 実験音楽とか、需要はあるけどマーケットが小さいものをDUCTで受け入れたくて。で、RITAでは展示もできるから、ストリートカルチャー界隈の連中とか、緊縛ショーとかね、普通のギャラリーではできないような人たちの展示や企画をやってる。そういうある意味、受け皿がない人たちのための場所をつくりたかった。たまに普通のクラブイベントもやるけどね、基本はニッチな狭いところを掘ってる。
ー緊縛ショーなどマニアックな世界を見せるイベントもSPAZIO RITA/DUCTではやってますが、そういうイベントは、よいちさんが呼びかけて始まったんですか? それとも、向こうからオファーがあった?
よいち:僕はプライベートでは緊縛に興味はない。ただ、緊縛系の写真は前から好きで。海外だと「ロープアート」って呼ばれてる世界で、そっちの文脈で好きだった。
緊縛ショーをやり始めたのは、向こうからのオファーで。縄師の人たちもいくつかグループがあって、やれる場所が限られてるんだよね。SMクラブとかね、うちよりももっとアンダーグラウンドな場所が多い。
ー一般の人たちは、かなり入りづらいですよね。
よいち:そう。うちみたいな場所だと、普段からセクシャルなことだけやってるわけじゃないから、お客さんも来れるきっかけになると思うし、使う方も使いやすいみたい。
ー緊縛ってなかなかマニアックな世界だなと思うので、 ハコの印象にも関わってくると思いまうが、そこはそんなに気にしていない?
よいち:そうだね。別に、緊縛ばっかりやってるわけじゃないけど(笑)。特定の印象が強くなると抵抗感が出るのも分かる。それでも受け入れている。
ーなるほど。あと、ノイズミュージックのイベントや、コアな海外ミュージシャンの来日イベントもやっているイメージが強いです。
よいち:言い方が難しいけど、緊縛だって、音楽で例えるならノイズみたいなもんで。だって、世の中の8〜9割はAKBとか、3代目とかを推してる中で、ノイズを聴いてるって本当にごく僅かな人たちだと思うから。
ーそういうイベントに行くと、意外と若い子が紛れ込んでいたり、普段見ない感じのお客さんたちがちゃんといて、確実に好きな人はいるんだなって実感します。
よいち:そうそう、少ないと言ってもちゃんと需要はあるのよ。同時に、もっと広がってほしい思いもある。うちでやってるイベントが新しい世界を知ってもらうきっかけになったらいいなって思ってる。そこに導くための、ちょっとポップな入口が欲しいけど、なかなか難しいよね。商売は本当に難しい。
ー緊縛やノイズだけでは、成り立たない?
よいち:成り立たない。正直、振り切ってフェティッシュバーやった方がお金は儲かると思う。好きな人が少ない分、単価を上げることにはなる。それで何とかするしかない。でも、ノイズのイベントって入場料もそんなに高くできない。だから、スパイスカレーの出店とノイズイベントを一緒にして「カレーとノイズ」ってイベントをやったりしたね。カレーで舌が麻痺したら、ノイズもいける(笑)。
ーSPAZIO RITA/DUCTの場所は、たまたま見つけた場所だったんですよね?
よいち:そうそう。別にこのエリアが特別好きで出したわけじゃない。自転車で家から通える立地で、単純に家賃がお得だったからここに決めた。
ー実際に店を出して、このエリアへ日常的に通うようになって、何か気づいたことはありますか?
よいち:近所にたまたま美味しい和菓子屋さん見つけたことくらいかな(笑)。あと、隣のお肉屋さんも仲いいよ。お惣菜もお弁当も美味しい。でも、基本的に周りに何もないし、駅からちょっと心細くなる距離だし。そんな場所だね。
ー何もない感じが、なんかSPAZIO RITA/DUCTの打ち出してる雰囲気には合ってる気もします。よいちさん的には、金山ってどんな町ですか?
よいち:率直なこと言っていいですか?
ーもちろん。
よいち:金山ね、僕あんまり思い入れがなくて。トヨピーちゃんがいたGroove!ぐらいしかない。
ーGroove!というのは?
トヨピー:かつて金山駅前にあった、新譜を取り扱うレコード・CDショップで。大学生の時、「バイトしたいです」って飛び込みました。通学時、電車の乗り換えが金山だったから、金山で何かないかなって探して。音楽は好きだけど、自分はめちゃくちゃ詳しいわけでもなくて、レコード屋で働くのかっこいいなっていう憧れがあったくらいでした。
私が24PILLARSを金山に出した理由は、ひとつはよいちさんと同じく家賃がお得だったという経済的な理由ですが、Groove!で10年働いてたから、この街に馴染みがあった、というのも大きいですね。
よいち: トヨピーちゃん、どのフロアだったの?
トヨピー:1階のJ-POPフロアでしたね。 「お前、J-POPやっとけ」っていう扱い(笑)。
ー(笑)。
よいち:昔は他にもレコ屋あったよね。
ーサウンドベイっていう中古レコ屋とか、アスナルの中にバナナレコード金山店もありましたね。
よいち:Groove!で万引きしてサウンドベイで売る、みたいな話も聞いたなあ(笑)。
ーそうなんですか(笑)。トヨピーさんは、先日行った金山の街についてのトークイベントでも「この街はもっと尖った方がいい」って言ってましたよね。
トヨピー:言いましたね。駅の利用人数とか数字だけ見ててもねって思って。
よいち:金山って何を売りにしてる街なのか?分からないよね。大須商店街とか、円頓寺とかだったら個性があるじゃん。金山は街がでかすぎて、突出した変な人が旗振っても、街としては一つになりにくいと思う。正直、今の金山って、わざわざ行く場所じゃないよね。名古屋市が「金山=文化の街」って打ち出す発想自体、むちゃくちゃだなとは思ってる。
ーですよね。でも、夜にはライブハウスになる喫茶店(ブラジルコーヒー)があったり、ハコワレやカジェヘラみたいに若者たちを中心に盛り上がってる飲食展があったり、今日取材させてもらっている24PILLARASさんもイベントにいくと大体いつも盛り上がってたり、点で見れば面白い場所はある。
よいち:ある。うーんまあ、だから、いい街なんじゃない〜〜。
ーめっちゃ嘘っぽい(笑)。
トヨピー:うちは「ただのオシャレカフェだ」って言ってるんですが、よいちさんのお店は、世の中の多くの人たちが理解できないようなことをやって成り立ってる。でも、それこそが文化だと思って。憧れはある。私だったらできないことをよいちさんはやってると思います。
よいち:も〜ギリギリだよ(笑)。
トヨピー:最初はうちも、カフェ&ギャラリーっていうスタンスで、ギャラリーも頑張ってたんです。でも、結局ギャラリーはうまくまわせなくて。こちらの持ち出し続きで、心が折れました。
よいち:折れるよね〜。
トヨピー:アートやコアなカルチャーを扱うって難しい。「もっと知ってほしい!」っていう熱い思いがないと無理だな、と。私はそこまでじゃないから。よいちさんみたいな、こういう方がこのエリアにももっと増えてきたらいいなって思います。今回のこういう「街についてどう思いますか?」みたいな取材とか、巻き込まれて迷惑だと思いますが(笑)。
よいち:こういう企画に誘ってくれるのうれしいよ。うちの場合、金山でも大須でもない、境界線上みたいなところに店があるからよく分かんない立ち位置で。トリなのかネズミなのか分からない、コウモリみたいな存在なんで……たまには外の世界にも開いていかないとね。最近、インスタ勉強中だから教えてよ(笑)。

